ミラノ生き別れ事件
80/06/29
この話、友人のナヲちゃんも加わって3週間ヨーロッパを小さくくるっと回った時、生き別れになりかけたというお話。
事件の主役、ナオちゃんと
ミラノから夜行でパリに向かうため発車の1時間前にホームに入った。すでにそのホームには、立派な列車が止まっていて確かにパリ行きと書いてある。今日はついているなあ、こんな新しくてきれいな列単に乗れるなんて⋯⋯と急いで乗り込みリザーブの札がかかっていないコンバートメントを見つけ、荷物を棚にのせ靴を脱ぎくつろぎはじめた。
三人で一部局占領しちゃってるわけだが、お客さんもあんまりいないし。
あんまりどころか、まだ誰も乗ってない。みんなのんびりしてんだな。
それにしてもドアは全
面ガラス張りで何もかもが新しくて、立派な列車だ。
これが噂のT・E・E かも知れない。アレッ?T・E・E って夜行はなかったんじゃない.。
でもいいやと、手提げげカパンからクッキーを取り出しぱくつき始めた。
ナヲちゃんが「売店でワインを買ってくるわ」と列車を降りた瞬間、ガタッと動いた。
どうしたんだろう。
なんでもないよ、という二つの気持ちが激しく交互に胸に押し寄せた時、
この列車スッーと動きだした。
速度が増していく。
「どうしょう」あわてて廊下に飛び出しキョロキヨロしたら、近くに同じくアタフタしているイタリアの学生二人がいた。
ホッ、事件はなんら解決方向に向かってはいないが、仲間がいたことで多少ホッとした。
それまでの青ざめようったらなかったもの。
お先真っ暗って、このことだ。
四人で通じないながら、ああだ、こうだと言いあっていたら、車掌がやってきた。
あー これで展望が少し広がった。
車掌はこの列車は車庫に入るという。そこから駅まで戻るしかない。
車庫から駅まで2 キロはある。
この学生たちについて行けばなんとかなるかもしれない。
でも、この学生現地人のくせに完全に舞い上がっているから、車掌のいうことちっとも理解してないみたい。車庫には5、6台の列車が止まっていたが、そこにいる人に聞いて、1台がもうすぐホームに行くことがわかった。
四人で乗り、じっと発車を持つ。 5 分待ったがホントにホームに行くのか‘確信が持てないし、このまま三人分の荷物を抱えてて夜道にほうりだされたらと不安がいっぱいになった。
列車がガタッと動いた時は、涙が
出そうになった。しかし、まだわからないホームが見えるまでは⋯⋯ね。やっとの思いでパリ行きのホームとは50メートルくらい離れたところに到着、私は自分の荷物とまぶた君のショルダーパッグにビニール袋三つを抱えフーフー走り歩き、まぶた君は自分のほかに
ナオちゃんのパックパックを持ち小さいパッグを肩からナナメにかけている。
私、40キロは持っていたな。でも、重いも、疲れたも言ってられない。
とにかくパリ行きホームに行かなきゃと足を引きずって腰を曲げて頑張った。
「ナヲちゃーん、ナヲちゃーん』とまぶた君は大声で叫びながら歩いている。
「ハーイ、どうしたの」ナヲちゃんがニコニコ顔で登場した時は全身の力が抜けてしまった。
バラバラになっても、パリで連絡がとれるしナヲちゃんもバスポートとお金は自分で持ってたんだから、アセらなくてもよかったかもね。
再度、乗り込んだ正真正銘のパリ行き夜行、席に着いて汗をふいていたらさつきのイタリアの学生たちが廊下を走り、この車両はパリ行きじゃないと移動している。 またまた、荷物を引きずり前の方に移動。
あーあ今日はよく走る日。
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TO BE CONTINUED
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